生活者見立て通信

生活者見立て通信#012「脱・優等生|社会の窮屈さを取りはらう粋な大人の“エゴ”イズム」

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生活者見立て通信は、主にマーケティングの戦略立案に関わる方々を対象に、世の中の流行や最新トレンドに関する複数の事例から背景にある太い潮流やインサイト、見立てについて独自の視点でまとめた定期レポートです。

■ 着目した生活者動向:子どものような遊びを心から楽しむ「キダルト」の台頭

今回の生活者見立て通信は「キダルト」という生活者動向に着目しました。キダルトとは、「子ども(kid)+大人(adult)」の造語で、子どもの頃に楽しんでいた遊びや玩具に再び興味を持ち、自由に楽しむ大人たちのことを指します。30代~40代の年齢層がメインで、子どもの遊び心を持っていると考えられており、玩具やプラモデル、ゲーム、人形、フィギュアなど、趣味として好きなものに没頭するのが特徴です*¹。

背景として、形式や同調圧力に縛られず、個人の選択を尊重する空気が強まってきていることが挙げられます。例えば、博報堂の調査によると、働きにおいて「仕事さえきちんとしていれば、どんな服装でもよいと思う」と回答した人の割合は41.2%と過去最高の数値に達しています*²。また、1980年代の日本人が重視していたことトップ3は「仕事」「家族との繋がり」「経済的な安定」でしたが、2020年代のトップ3は「多様性」「自分らしさ」「柔軟な働き方」へと変化しており*³、価値観の大きな転換が明らかになっています。

こうした社会環境の中で、少子化で子どもの人口が減少しているにも関わらず、玩具市場は4年連続で拡大しています。「大人が子どもの遊びを再び楽しむ」という新たな需要が市場を押し上げており*⁴、「キダルト」の台頭がうかがえます。

QOで実施した検証調査*⁵でも、「子どものころに好きだったことを、大人になってから制約なく思いっきり楽しめるとうれしい」への共感度は68.8%と、動向を裏付けられる結果となりました。


■ QOプランナーの見立て:まじめを脱ぎ“エゴイスティックに楽しむ”、新時代の大人の流儀

QOプランナーは、これらの生活者動向を踏まえ、裏側にあるインサイトを読み取り、下記のように見立てています。

これは、周囲の常識に迎合するために自分らしさを我慢することが無駄であると大人たちが気付き始め、これからの世の中はルールや肩書にとらわれず、「自分本位でわがままに」「自分の欲求に素直に行動する」ことの価値が高まるフェーズにシフトしているという見立てです。 「#リカ活*⁶」や「#シル活*⁷」などともいわれるように、子ども向けコンテンツの消費を大人が牽引したり、キャラクターとブランドのコラボといった、かわいさやノスタルジーにステータス性を融合させることで、大人も楽しみやすく話題性も狙った商品も増加しています*⁸。

この見立てについて、検証調査では、全体の共感度は40.5%でしたが、特に年代で差が出ており、Z世代の共感度は60.8%と比較的高い結果となりました。特に、「大人でも自由に楽しむことの魅力」が高評価のポイントでした。


■ QOプランナーのコメント

今回担当した河部氏、瀨﨑氏、寺西氏は、今回の生活者動向や裏側のインサイト、見立てについて以下のようにコメントしました。

「形式や同調圧力から解放されつつある社会の中で、「多様性」や「自分らしさ」を重視する価値観が広がっていることが見えてきました。それに伴い、典型的な幸せのロールモデルの存在が薄れ、自分で選び決める時代に将来の不安を感じる人も多いことが読み取れました。
その中で、ブランドのキャラクターコラボや平成女児カルチャーブームが起き、少子化に反して玩具市場が拡大していることは興味深い事象です。
それは自分なりの幸せを個々で追求するために、自分の欲求に素直に行動することや、好きなことを追求していく生き方の価値が高まってきているからではないでしょうか。そんな“ちょっと尖った新しい大人のあり方”が当たり前になり、いたずらっぽく楽しむ生き方がこれからの大人の魅力を創っていくのではないかと考えられます。」


*1 出典:株式会社マイナビ、マーケティング・広報ラボ、2025年「玩具市場を牽引する「キダルト」とは? 注目される理由や特徴を解説
*2 出典:株式会社 博報堂、生活定点1992-2024、2024年「仕事さえきちんとしていれば、どんな服装でもよいと思う
*3 出典:株式会社 博報堂、2025年「博報堂100年生活者研究所、“昭和100年間”の日本人の幸福度や価値観を評価した意識調査を実施
*4 出典:一般社団法人日本玩具協会、2025年「2024年度の日本の玩具市場規模は前年度比107.9%の1兆992億円で過去最高を更新
*5 検証調査概要
調査対象者:全国の15-69歳 ※中学生以下は除く
回答者数 :1,236人
割付方法 :性年代別に均等回収
調査方法 :インターネットリサーチ
調査期間 :2025年8月19日(火)~21日(木)
調査企画 :QO株式会社
調査委託先:株式会社マクロミル
*6 出典:株式会社タカラトミー「おとなもリカちゃんを楽しもう #リカ活
*7 出典:株式会社読売新聞東京本社、読売新聞オンライン、2024年「シルバニアファミリーに大人も夢中!シル活はストレス社会の癒やし
*8 出典:株式会社コメ兵ホールディングス、KOMERU、2023年「ハイブランドのコラボ商品が熱い!アニメやキャラクターとの意外な組み合わせに注目

Written by 河部 哲成
QO株式会社 アカウントマネージャー| 2010年にマクロミルに新卒で入社。関西支社で広告代理店を中心にリサーチの営業職として従事。 2015年から東京本社に異動して博報堂を専属で担当。チームリーダー/マネージャーを経験。 2019年からHMM(現QO)に初期メンバーとして出向し、2024年にQOへ転籍。 自身で担当したリサーチプロジェクトは2500件を超え、リサーチにおいてほぼ全ての業界/テーマを経験。
Written by 瀨﨑 雄介
QO株式会社 マーケティングプランナー| 2017年新卒でマーケティング会社に入社。 食品、化粧品、不動産、学校、自治体など幅広い業界でリサーチやインナーブランディングの業務を担当。 2021年に外資系リサーチ会社に活躍の場を移し、グローバル案件の経験を積んだのち、2022年に現在のQOに入社。 リサーチの知見を武器にクライアントのマーケティング活動をサポート。 2023年より博報堂のストラテジックプラニング局Paasons Advisoryに常駐。 大手通信会社を中心に各リサーチ&プランニングの業務を対応中。
Written by 寺西 成美
QO株式会社 マーケティングプランナー| WEBを中心としたリサーチ業務に携わった後、2017年に現職のQOに入社。 定量調査を主軸に、日用品、アパレル、官公庁など、幅広い業界やクライアントのマーケティングリサーチ業務に従事。 広告効果測定、市場実態の把握、インサイト抽出といった調査テーマに基づき、リサーチプランニングや分析を行う。 さらに、体系化されたマーケティング論理と、QO内で蓄積されてきたリサーチの暗黙知を基に、リサーチ手法の規格化や新たなリサーチソリューションの開発に取り組む。