生活者見立て通信

生活者見立て通信#021『「人の気配」をBGMにして自分を整える、新しいセルフケアのかたち』

生活者見立て通信#21表紙

生活者見立て通信は、主にマーケティングの戦略立案に関わる方々を対象に、世の中の流行や最新トレンドに関する複数の事例から背景にある太い潮流やインサイト、見立てについて独自の視点でまとめた定期レポートです。

■着目した生活者動向

①「孤独感」の増加

野村総合研究所の調査では、全体の4割以上が「日常において孤独を感じる」と回答しており、特に40〜50代の中高年で増加傾向にあります。*¹
また、オトバンクが実施した調査によると、正社員の43.3%がリモートワーク中に「孤独感」を経験。人と話せない状況や情報が入ってこないことによるコミュニケーション機会の不足が主な要因として挙げられています。*²

②SNS等による情報疲労・アテンション疲労の広がり

モバイル社会研究所のデータでは、SNS利用者のうち男性は約5~6割、女性は約6〜7割がSNSによる情報疲労を感じていると回答しています。*³
さらにSHIBUYA109 lab.のレポートによると、若者世代の学生の中では、SNSの閲覧だけでなく自分や他人、情報に対する「アテンション」がストレスを増幅させていることが明らかになりました。*⁴

③「孤独」と「つながり疲れ」の間で生じるジレンマ

①②より、高まる「孤独感」の一方で、情報負荷やアテンション疲労も同時に広がっており、生活者は「孤独の回避」と「つながり疲れの回避」の狭間でジレンマを抱えている実態が浮き彫りとなっています。

■QOプランナーの見立て:人の気配や空気感をBGMにして、自分の心と行動を自然に整える「環境調律型、セルフ・チューニング」

QOプランナーは、これらの生活者動向を踏まえ、裏側にあるインサイトを読み取り、下記のように見立てています。

これは、孤独と過度なつながりの間でジレンマを抱える生活者にとって、周囲の「人の気配や空気感」をBGMのように活用して自分の心と行動を自然に整えることが、新たなセルフケアになるという見立てです。

実際に、言葉に頼らずお互いの存在を感じ合う「位置シェアラー」*⁵や、他人の作業風景を流すことで自分も同じ空間で一緒に勉強している感覚を味わう「Study with me」*⁶など、「ただつながっているだけ・見ているだけ」という行為・コンテンツが広がっています。

 今回の見立てについて、QOが実施した検証調査*⁷では、全体の共感度は40%に留まりましたが、Z世代では53.1%と他の世代よりも比較的高い結果となりました。自由回答からは「話すことはないが一人じゃないという点がとても興味深い」「部屋の掃除や料理をしながら友達と通話をしたりしているので共感できた」などの声がみられました。

■QOプランナーのコメント

担当した川村氏、磯矢氏、松﨑氏は、今回の生活者動向や裏側のインサイト、見立てについて以下のようにコメントしました。

『リモートワーク等による孤独感と、SNS等によるアテンション疲労の広がりから、生活者は「孤立もしたくないが、過度なつながりにもストレスを感じる」というジレンマの中にいることがうかがえます。こうした中で広がる、位置シェアラーや作業動画といった「ただつながっているだけ」の行動は、密な交流を求めるものではなく、他人の気配をBGMのように感じながら自分のペースを守りたいという欲求の表れではないでしょうか。

生活者は、人の気配を借りて「自分が機嫌よく過ごすための環境」を自律的に整えようとしています。この「環境調律型、セルフ・チューニング」という視点こそが、これからの心地よい生活環境やセルフケアを提案する鍵になると考えられます。』


*1 出典:株式会社野村総合研究所、2025年『今こそ企業が向き合うべき「孤独・孤立」
*2 出典:株式会社オトバンク、audiobook.jp法人版、2026年『約4割が孤独感を経験。リモートワーク時代に人事が向き合うべき“心理的なつながり”
*3 出典:株式会社NTTドコモ、モバイル社会研究所、2026年『SNSの「情報の多さ」により、利用頻度にかかわらず6~7割が疲れを実感
*4 出典:株式会社SHIBUYA109エンタテイメント、SHIBUYA109 lab.、2026年『Z世代のアテンション・デトックスに関する調査
*5 出典:株式会社博報堂、株式会社 SIGNING、HAKUHODO HUMANOMICS STUDIO、2024年『Z世代から拡がる新しい「親密さ」とは!?位置情報共有がもたらす、新しいつながり「シン密圏」

*6 出典:株式会社 やる気スイッチグループ、やる気ラボ、2020年『Study with me/作業用動画で勉強の集中力を高めよう!
*7 検証調査概要
調査対象者:全国の15~69歳 ※中学生以下は除く
回答者数 :1,236人
割付方法 :性年代別に均等回収
調査方法 :インターネットリサーチ
調査期間 :2026年8月19日(水)~20日(木)
調査企画 :QO株式会社
調査委託先:株式会社マクロミル

Written by 川村 陶子
QO株式会社 プロジェクトマネージャー|広告代理店の営業職を経て現職。クロスメディアの効果測定やDCRを活用した効果検証を通じてマーケティング課題の解決を支援。
Written by 磯矢 宗治
QO株式会社 マーケティングプランナー|延べ100社以上の企業を担当し、商品企画やコミュニケーション戦略の企画立案など、様々な領域において企業のマーケティングを支援。
Written by 松﨑 さくら
QO株式会社 マーケティングプランナー|オンライン常駐もしながら、化粧品/ファッション関連を中心に得意先課題のヒアリング~ネクストアクションのご提案までを一貫して対応。