生活者見立て通信

生活者見立て通信番外編「気候変動の常態化がもたらす生活変動」

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生活者見立て通信は、主にマーケティングの戦略立案に関わる方々を対象に、世の中の流行や最新トレンドに関する複数の事例から背景にある太い潮流やインサイト、見立てについて独自の視点でまとめた定期レポートです。
今回は番外編をご紹介します。

15~69歳の生活者1,962人を対象とした意識調査により、近年の酷暑で生活者の消費行動がどのように変化しているかを分析しました。
調査の結果、生活者は、酷暑で諦めたことを、別の季節や時間、場所へと再配置して楽しむ新しい消費行動「サマーリベンジ」が生まれていることが明らかになりました。

■マクロ動向:国が定義した「酷暑日」、2026年夏を前に問われる企業の気候変動対策

近年、日本では酷暑の常態化が進んでいます。 気象庁の統計データ*によると、2025年には夏の平均気温が平年と比べて+2.36度と、統計開始以来最も高い値となりました。2026年4月に気象庁は、40度を超える気温が毎年観測される状況を受け、最高気温が40度以上の日を「酷暑日」と定義するに至りました**。
2026年の酷暑を目前に控えた今、生活者インサイトとトレンド分析に強みを持つQOは、生活者の夏に対する意識や新たに生まれる消費行動について明らかにするため調査、分析を行いました。

*2025/9/1 気象庁「日本の夏(6~8月)平均気温差の経年変化(1898~2025年)」 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_jpn.html
**2026/4/17 気象庁「最高気温が40℃以上の日の名称を「酷暑日」に決定」 
https://www.jma.go.jp/jma/press/2604/17a/40degree_name.html

■生活者インサイト

夏は「楽しむ」から「耐える」へ。QOが捉えた、生活者の「あきらめの夏」

本調査では夏に対する意識変化を調べるため、直近2~3年の夏とそれ以前の夏を比べて、各気持ちに変化があるかどうかを尋ねました。その結果、「夏は暑すぎてやりたいけど諦めるものがある」に対して「そう思うことが増えた」と回答した生活者が、全体の約7割となりました(※1)。
※1「そう思うことが増えた(34.6%)」「どちらかというと、そう思うことが増えた(36.9%)」の合計。

「酷暑によって失われた夏らしさ」 についても自由回答を求めたところ、以下のような回答が得られました。

  • 「保冷できる水筒を持ち歩くようになった。荷物が増え、準備の時間も必要になり、外出自体が億劫になった」(40代女性)
  • 「テレビで花火大会の中継を見ることが増えたが、臨場感がなく満足感が足りない」(50代女性)
  • 「ビアガーデンなどの会合などを室内に。野外で行った時の解放感がなかった。」(50代女性)
  • 「外で遊ばなくなり、運動不足や子どもとのコミュニケーション不足につながった」(30代女性)
  • 「一日中エアコンをつけるようになった。通勤する道を日陰が多い道に変更した。お金がかかる。遠回りするので時間もかかる。」(30代女性)

これまで夏は、旅行やレジャー、イベントなどを通じて、自分を解放したり、新しいことに挑戦したりする「楽しむ季節」として捉えられてきました。 他方、今回の調査からは、酷暑によって外出や移動そのものが負担となり、生活者から「耐える季節」として認識され始めていることがうかがえます。

さらに、生活者が酷暑によって失ったと感じている「夏らしさ」の正体は、身軽に外に出る自由・解放感や、野外の遊びで得られていた本能的・感覚的な刺激であったことも、自由回答からも見えてきました。

エネルギーは消えない。失われた夏体験をずらして取り戻す「サマーリベンジ」消費の台頭

生活者は夏を「耐える季節」と捉える一方で、調査からは、生活者が単に夏を諦めているだけでないこともわかりました。直近2~3年の春・秋とそれ以前の春・秋を比べて、各気持ちに変化があるかどうかを尋ねた際、全体の約7割が「「春」や「秋」と呼べる期間になるべくアクティブに動こうと思う」に対して「そう思うことが増えた」と回答(※2)しました。
※2「そう思うことが増えた(38.0%)」「どちらかというと、そう思うことが増えた(30.8%)」の合計。


「夏にやらなくなったことの代替行動」 についても自由回答を求めたところ、夏にできなくなったことを、別の季節・時間・場所へ移し替えて実現しようとする回答が多く見られました。具体的には、「ビアガーデンに行く時期を真夏ではなく9月末などにずらすようになった。(20代女性)」「夏フェスに行かなくなった(代わりに)春や冬のフェスに行くようになった(20代女性)」「花火大会に行かなくなった(代わりに)花火大会を中継で見たり、ベランダから見た(20代女性)」といった声がありました。

この他にも「野外のイベントに行かなくなったから、ホテル宿泊などをして楽しんだ(20代女性)」「カフェに行ったり外食しなくなった(代わりに)少しいいコーヒーを買ったり家でカフェ気分を味わった。(30代女性)」「ゴルフ代に使わなかったお金で、映画を観たり、好きなアーティストのDVDを買ったりしている(60代男性)」など、夏に活動を控えた分、趣味や他の活動で少し贅沢をする姿もみられました。

ファッションにおいては、「夏はほとんど服装が決まってしまう(その代わり)春服をたくさん買って、コーディネートを楽しむようになった。(20代女性)」「夏服と秋服を混ぜて楽しむことが増えた。(10代女性)」など、工夫しながら楽しむ様子がうかがえました。

また、短くなった春と秋に愛着や希少価値を強く感じる様子として「積極的にお花見、積極的にイチョウ狩り(10代女性)」「その季節の風物詩、秋刀魚やきのこなどの季節のものをより積極的に食べるようになった(30代男性)」など、季節を積極的に堪能しようとする意識もうかがえました。

■QOプランナーによる見立て:夏商戦の前提が変わる。「サマーリベンジ」がもたらす春秋・インドアへの市場拡張

今回の調査から見えてきたのは、生活者は酷暑により失われた夏体験を、ただ我慢しているわけではないということです。むしろ、これまでのバイタリティやエネルギーはそのままに、失われた解放感や刺激を取り戻そうと、季節や時間場所、手段をずらしながら、工夫した楽しむ新たな消費行動「サマーリベンジ」が生まれています。
今後は夏商戦といった従来の発想だけではなく、春秋にシフトするレジャー需要や、解放感を取り戻したい欲求を踏まえた新しい商品・サービス設計が求められるのではないでしょうか。


生活者見立て通信番外編(抜粋版)では、より詳細な調査結果やプランナーによる示唆、マーケティング活動へのヒントをまとめています。

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調査概要
調査対象者:一都三県在住の15歳~69歳男女
回答者数 :1,962人
調査方法 :インターネットリサーチ
調査期間 :2025年11月17日(月)~19日(水)
調査企画 :QO株式会社

調査委託先:株式会社マクロミル

Written by 待井 久美子
QO株式会社 マーケティングプランナー| 2024年QO入社。国内外の大手総合広告代理店・デジタルエージェンシーにて、ストラテジックプランナーとしてブランディング、マーケティング戦略立案に長年従事。時代の変遷と共に変化する生活者のインサイトを重視した価値創造を強みとする。
Written by 千場 明美
QO株式会社 リサーチャー| 事業会社経験を経て、リサーチャー職に。小売・食品系企業のKPIマネジメントやアドホック調査を主に担当。