生活者見立て通信は、主にマーケティングの戦略立案に関わる方々を対象に、世の中の流行や最新トレンドに関する複数の事例から背景にある太い潮流やインサイト、見立てについて独自の視点でまとめた定期レポートです。
■ 着目した生活者動向
①“悪目立ち”や“違和感”で感情のスイッチが入る生活者
大阪・関西万博では、現在はポジティブな声も多くあがっている一方で、開催前は巨額の費用や公式キャラクター「ミャクミャク」などへの反発がSNSで加速していました*¹。また、日常的な家の間取りを題材に、違和感まみれの設定を持たせた本「変な家」は、累計発行部数が164万部を超える異例のヒットを記録しています*²。このように、“悪目立ち”が評価の入り口として機能したり、ちょっとした“違和感”や“ズレ”が人々の関心を呼び起こしたりする現象がみられます。
②感情を検索する若者たち
「ありがとうと言われると嬉しい 理由」「夜になると不安になる なぜ」など、自分の漠然とした感情をそのまま検索する「感情検索」が若者を中心に広がっています。背景には、「分からないをなくしたい」「全てを言語化したい」という欲求があります。また、検索を通じて「自分の感情がみんなにもあるのかどうか」の答え合わせをし、安心を得ようとする心の動きも強まっています*³。
■ QOプランナーの見立て:「なんだこれ?」を放置しない “考察上手な” 生活者を射止める『外し』という仕掛け
QOプランナーは、これらの生活者動向を踏まえ、裏側にあるインサイトを読み取り、下記のように見立てています。
これは、情報も選択肢も溢れているいまの時代は、完璧すぎるものではなく、予定調和から少しだけはみ出す「外し」が人を動かす新しい行動のトリガーになっているという見立てです。 サントリージン「翠」の広告では、キャッチコピーの違和感のある改行位置の意図を考察したコメントがSNSに続々と投稿されたり*⁴、日本ハムの「シャウエッセン」では、“禁じ手”を解禁した「夜味」が想定の3倍ヒットしたりと*⁵、企業側が仕掛けた「外し」が生活者の好奇心を刺激しています。
上記を踏まえ、QOプランナーは生活者の購買行動をモデル化しました。
この「BETAR(ベタール)モデル」は、「外し」がトリガーになる購買行動モデルです。「外し」との出会いを入口とし、その後の態度変容までどのようなプロセスを経ているのか、QOプランナーの仮説をもとに形にしました。
<BETARモデル>
Bump : 予想外の衝突 違和感や引っかかりなどの「外し」に不意に出会い、目と心が止まる
Explore : 探索 他者の反応とも照らし合わせながら、「外し」の意図や背景を読み解く
Translate : 翻訳 自分なりに咀嚼し意味づける(「探索」と行ったり来たり)
Action : 行動 試す・体験する・買う・使うなど
Remix : 再解釈して共有 体験を通じて自分なりの視点で再解釈し、共有する
今回の見立てについて、QOが実施した検証調査*⁶では、イノベーター理論のタイプ別に共感度の差が出ており、イノベーター層では80.6%、アーリーアダプター層では60.8%と、先進的な層を中心に比較的高い共感度を得ていることがわかりました(図1)。 また、BETARモデルでの購買実施経験は、イノベーター層では63.2%、アーリーアダプター層では44.9%となり、今後一般層への浸透・波及が期待されます(図2)。
▼図1

▼図2

■ QOプランナーのコメント
今回担当した岩崎氏、土師氏、三上氏、青木氏は、今回の生活者動向や裏側のインサイト、見立てについて以下のようにコメントしました。
「昨今、「変な家」やサントリージン「翠」の広告など、“違和感”を含むコンテンツが話題を呼んでいます。情報や選択肢があふれる現代では、完璧すぎるものはかえって流され、人々の関心を集めにくくなっています。一方で、企業が仕掛けた“外し”や日常の中で出会う小さな“ズレ”に触れたとき、人は無意識にその背景や意図を探りたくなるのではないでしょうか。違和感をきっかけに「自分にとってどうか」を考える行動が生まれる点は興味深い現象です。意図された“外し”は、単なる奇抜さではなく、人を惹きつけ、考えさせ、行動を促す新しいトリガーになっていると考えられます。」
関西テレビ放送株式会社、8カンテレ、2025年「「気持ち悪い」「怖い」当初は厳しい声も 今は大人気のミャクミャク”様”「常識ぶっ壊した」と教授」
*2 出典:株式会社KADOKAWA、ダ・ヴィンチWeb、2021年「「この家、何かがおかしい」二重扉で窓がない独房のような子供部屋。間取りから感じるただならぬ事情」
株式会社PR TIMES、PRTIMES、2025年「株式会社双葉社|ドイツ語翻訳版『変な絵』が第1位快挙!! 世界33か国出版で世界的164万部ミリオンセラーがドイツラジオ局主催「5月の最優秀犯罪小説」に選出!!!」
*3 出典:株式会社博報堂DYホールディングス、生活者データ・ドリブン・マーケティング通信、2024年「「感情検索」から見えてくるZ世代のリアル 自分、他人、社会との関係性 博報堂若者研究所×ヴァリューズ 共同研究レポート前編」
*4 出典:株式会社日経BP、日経クロストレンド、2025年「サントリージン「翠」広告コピーの改行位置で「大激論」 真相を解明」
*5 出典:株式会社日経BP、日経クロストレンド、2024年「シャウエッセンを「夜味」にした理由 “禁じ手”は話題づくりのスパイス」
*6 検証調査概要
回答者数 :1,236人
割付方法 :性年代別に均等回収
調査方法 :インターネットリサーチ
調査期間 :2025年9月10日(水)~11日(木)
調査企画 :QO株式会社
調査委託先:株式会社マクロミル