生活者見立て通信

生活者見立て通信#020「野心はあるのに、動けない――。自己凍結状態の生活者」

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生活者見立て通信は、主にマーケティングの戦略立案に関わる方々を対象に、世の中の流行や最新トレンドに関する複数の事例から背景にある太い潮流やインサイト、見立てについて独自の視点でまとめた定期レポートです。

■着目した生活者動向

「自己効力感」「自己肯定感」の低迷と「学習性無力感」の広がり

日本財団が実施した調査によると、自国の将来が「良くなる」と回答した日本の若者は15.3%、「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」は45.8%、「自分には人に誇れる個性がある」は53.5%と、いずれも調査対象国の中で最下位となっており、日本の若者における自己効力感・自己肯定感の低さが浮き彫りになっています。*¹
こうした背景には、繰り返しの失敗経験や、自分の行動が認められない/通らないといった体験が重なることで、「どうせやっても無駄だ」と次第に自発的な行動を控えるようになる「学習性無力感」に陥っている状況があると考えられます。*²

一方で高まる「変わりたい」意識

Grand View Researchの調査によると、日本の自己啓発市場は拡大傾向にあり、今後も2030年にかけて年平均8%の成長率で拡大すると見込まれています。*³
また、ビジネス書ランキングにおいても自己啓発関連書籍が上位にランクインするなど、関心の高さがうかがえます。*⁴
こうした動きから、自分をより良くしたい、変わりたい、成長したいといった意欲そのものは依然として高いことが読み取れます。

③初期段階からの「小さな手応え」を求める生活者

育てるフライパン*⁵やミニ盆栽*⁶といった“プチ育成”のように、自分が手をかけた分だけ変化が返ってくる体験を日常に取り入れる動きや、シャクティマット*⁷やゆる薬膳*⁸といった、手軽に始められ、その場で“健康になれた感覚”を得られる取り組みが広がっています。負担の大きい挑戦ではなく、取り組みの初期段階から小さな手応えや変化を実感できる選択肢に関心が集まっていることがうかがえます。

■QOプランナーの見立て:前向き行動を阻む「失敗するかも不安」を払しょくする、入り口の「先取り成功体験」を設計する

QOプランナーは、これらの生活者動向を踏まえ、裏側にあるインサイトを読み取り、下記のように見立てています。

これは、自己効力感の低さや学習性無力感を背景に最初の一歩を踏み出せない生活者に対し、入り口段階で小さな成功実感を得られる“先取り成功体験”をどう設計できるかが、行動創出の鍵となるという見立てです。

今回の見立てについて、QOが実施した検証調査*⁹では、特にZ・Y世代女性からの評価が高く、共感度はZ世代女性で74.7%、Y世代女性で65.7%でした。自由回答においても、「やる気がないわけではなく、出来ない自分と向き合いたくない」「少しでも成功体験があると前向きに行動できるようになりそう」など、共感の声がみられました。


■ QOプランナーのコメント

今回担当した土師氏、柴崎氏、河部氏は、今回の生活者動向や裏側のインサイト、見立てについて以下のようにコメントしました。

『日本の若者における自己効力感・自己肯定感の低さや、学習性無力感によって最初の一歩が踏み出せない“自己凍結状態”の広がりから、生活者は決して怠けているのではなく、動きたくても動けない状況にあることがうかがえます。一方で、自己啓発市場の拡大に見られるように、変わりたいという意欲は確かに存在しています。こうした“意欲と行動の乖離”が生まれている今、求められているのは大きな変化を迫ることではなく、行動前に「できた」という感覚を得られる設計です。“先取り成功体験”を起点に、生活者の自己凍結を解きほぐしていくことが、これからの行動創出につながるのではないでしょうか。』


*1 出典:公益財団法人 日本財団、2024年「18歳意識調査
*2 出典:Unipos株式会社、UNITE、2023年「真面目だが「挑戦する姿勢」が乏しい日本をどう変えるか
*3 出典:Grand View Research, Inc、“Japan Personal Development Market Size & Outlook, 2025-2030
*4 出典:日本出版販売株式会社「年間ベストセラー|2025年年間ベストセラー(単行本ビジネス)
*5 出典:株式会社カカクコム、キナリノ、2023年「使うたびに心がときめく!自分で育てる【台所道具】
*6 出典:株式会社アイモバイル、ふるさと納税DISCOVERY、2025年「ミニ盆栽とは?その魅力と楽しみ方を解説!
*7 出典:株式会社 シャクティジャパン「Shakti Japan
*8 出典:薬日本堂株式会社、漢方ライフ、2025年『「しあわせは食べて寝て待て」から学ぶ“ゆる薬膳”②
*9 検証調査概要
調査対象者:全国の15-69歳 ※中学生以下は除く
回答者数 :1,236人
割付方法 :性年代別に均等回収
調査方法 :インターネットリサーチ
調査期間 :2026年5月13日(水)~14日(木)
調査企画 :QO株式会社
調査委託先:株式会社マクロミル

Written by 土師 ゆきの
QO株式会社 マーケティングプランナー | 2017年より前職にて仏ブランドのエージェントとしてブランド管理やライセンス業務などに携わったのち、2020年よりマーケティングコンサルティング業務に従事。 主に美容|ファッション領域のクライアント様を中心に、リサーチや世代論ナレッジを活用した生活者やブランドのインサイト探索を通して、マーケティング戦略&施策立案、ブランディング戦略&施策立案、トレンド分析、未来予測等の業務に携わる。 2024年2月よりQOに入社し、現職。
Written by 柴崎 えみり
QO株式会社 マーケティングプランナー| 2019年よりメディアデータ支援企業にて分析業務に従事後、2021年にHMM(現QO)へ入社し、リサーチャーとして幅広い業界の調査を経験。 2025年よりマーケティングプランナーとして、食品やIT領域を中心にコミュニケーション開発やリブランディング、ターゲット探索などの業務に携わる。 リサーチ知見を活かしたインサイト探索から戦略立案まで、一貫した伴走支援を強みとしている。
Written by 河部 哲成
QO株式会社 アカウントマネージャー| 2010年にマクロミルに新卒で入社。関西支社で広告代理店を中心にリサーチの営業職として従事。 2015年から東京本社に異動して博報堂を専属で担当。チームリーダー/マネージャーを経験。 2019年からHMM(現QO)に初期メンバーとして出向し、2024年にQOへ転籍。 自身で担当したリサーチプロジェクトは2500件を超え、リサーチにおいてほぼ全ての業界/テーマを経験。